スタートは土地探し
今回はマイホーム作りの入り口である土地探しに関してスポットを当てます。
土地にはそれぞれ特徴があり、本当に良い土地かどうかは皆さんの生活環境や価値観に左右され一概には言えないところがあります。
しかし、必ず押さえなければ後々後悔するポイントがあるので解説をします。
隣地境界杭が明確か?
土地に正確な境界杭が入っていることを確認することは重要です。
隣の敷地と自分の敷地との境目の印となるものが境界杭です。
コンクリートでできていたり、ビョウで打ち込まれていたり、プレートが貼られていたりと様々な形状のものがあります。
この隣地境界杭は非常に大切なポイントです。
杭のずれや割れがあったり、そもそも打ち込まれていないことがあります。
そのような場合、工事に着手した時に困ります。
例えばブロックを建てる時にも、家の配置を決める時にも、基準がないことになるからです。
その場合、設計者は今ある工作物の位置を参考に「仮測点」というポイントを勝手に決めて、工事の完成をさせます。
しかし、もっともらしく決められた「仮測点」という基準に法的な根拠は何もありません。
数年先に隣地の家が建替工事を始めた時、測量士が正確な境界杭の位置を確定測量した時に、皆さんの家がお隣にはみ出している事が発覚したら大変です。
土地の境に境界杭を設置することを確定測量と言います。
確定測量は測量士に依頼しなければならず、だいたい30万円くらいの費用がかかります。
土地を購入する際に、不動産業者さんで確定測量を手配してくれているか確認してください。
土地の形状が複雑すぎないか?
土地の形状(形・高低差など)が単純でない場合、計画段階で色々と困難に直面します。
土地には建築基準法で定められたさまざまな規制があり、土地の面積に対して建物を建てることができる面積は建蔽率や容積率という割合で決まってしまいます。
また北側隣地の日照を確保するため北側斜線制限というものもあります。
土地を最大限に活かすには、特殊な利用目的があれば別ですが、何にも使えない無駄なスペースを生む複雑な形状の土地を選ぶよりは、シンプルな長方形が一番です。
複雑な地形をどう活かすかは設計者の力量にもかかってきますが、もしもいい利用方法が何も見つからない場合、じゃあ花壇にでもしておきましょうか、となるのがオチです。
敷地が私道に面してないか?
一般的に道路には公道と私道があり管轄している所有者が異なります。
購入しようとする土地が私道と接している場合は注意が必要です。
その私道を利用して生活をしている地権者とのトラブルを発生させることがあります。
→ 私の経験談ですが、私道に面する側の建物のセットバックを強要させられそうになったことがあります。もちろん法的にも本来必要のないセットバックです。その理由は、将来その私道を公道にするために道路の幅を確保しておきたいからという先方側本位の考え方によるものでした。
あと、私道の下の共用排水管の管理がきちんとされていないことがあります。
公道ですと定期的に劣化した配管などを入れ替える工事を行い、生活に影響がないように公共工事としてメンテナンスがされているのですが、私道の場合はすべての管理費用が住人負担なので、驚くことにずっと放置されたままになっている場合があります。
→ これも体験談ですが、元々近接する私道の下の配管が何十年もメンテナンスされておらず、いまだに土管が入っており劣化していたため、その真横での新築工事中にこちらが発生させた振動だけで割れてしまったことがありました。謝罪に行くと、割れた部分の補修だけではなくそれより上流の配管も含めた全ての部分のやりかえを所有者の組合から要求されたことがありました。
また、共用の私道にはその私道を利用している人々の間で協定が組まれていて、敷地が接しているだけでもその協定を押し付けられることもあります。なるべくそのような土地は選ばないのが懸命だと思います。
どうしても買いたい場合はそこにどのような協定があり、排水管の管理などはどうなっているかなどしっかり地権者の人に聞き取りしておいた方が良いです。
ちなみに不動産業者の方ではそこまでの細かな情報は知り得ていないことがほとんどだと思います。
あくまで自己防衛をするしかないと思ってください。
どうしても後から住む人の立場は弱くなってしまいます。
協定に納得できないような内容があれば、その土地の購入は見送ってもいいのではないでしょうか。
敷地までトラックや重機が入れるか?
建設のために大きなクレーン車や基礎工事で使うユンボなどを道路を通過させ搬入します。
道幅が4メートル以下しかない場合とか、トラックがそこに至る経路の途中で曲がれないコーナーがある場合などは注意です。
特殊な小型重機を入れたり、どこかの積替え場所で大きなトラックから小さなトラックに材料を乗せ換えないといけなかったりします。
それは特殊な対応となるため、別途費用が何十万とかかってきてしまいます。
また、一番懸念されるのは、皆さんの生活においても車が入りにくかったり、救急車や消防車などの緊急車両が通れなかったりすることもあるので、道路の狭い土地の購入はおすすめしません。
また、敷地の地盤高さが道路から2メートル以上あると、重機を敷地内の吊り込みにクレーン車を手配しなければいけません。
そのような高低差のある土地にも余計な費用がかかってきます。
高低差のもう一つのデメリットは、地盤の土が道路側に流れ出ないように擁壁という壁を外構工事で作らないといけません。
それもまたかなりの費用負担が生じます。
道路の狭い土地、高低差のある土地は要検討です。

どんな縛りや条件のある土地か?
先程述べたように建築基準法でさまざまな縛りがあるだけでなく地域によっては宅地造成工事規制区域に指定されていたり、農地転用許可が必要な土地などに指定されていたり、崖条例に関わる土地だったりします。
ここではひとつひとつ細かくは説明しませんが、そのような制約のある土地が存在するということを知っておいてください。
そのような土地だと、許可されるまでの間しばらく工事に着手できず、長期間待たされたり、申請費用などで手間やお金がかかったりします。
ハウスメーカーの分譲地では建築条件付きの土地として売り出されていることが多いです。
指定されたハウスメーカーでしか建物を建ててはダメですという条件です。
ハウスメーカーはそこに自社の建物を建ててもらうために土地を仕入れて、場合によっては土地を開拓しているので当然とは思います。
そのハウスメーカーが気に入っている場合はいいのですが、もし違うメーカーで家を建てることを考えているのであれば、ハウスメーカーの変更をするべきかしっかり検討した上で土地を購入するようにしましょう。
もしかするとその土地がしばらく売れ残っている時に条件付きが解除される事もたまにあるのでチェックしておくといいかもしれません。

旗竿敷地は大丈夫?
旗竿敷地が気になっているが買っていいのか、と悩まれている方がいます。
個人的には土地の形状だけを考えるのであればだと思います。
道路から敷地までの経路が細いだけなのに土地が割安だったりしますし、売り出すためにきちんと境界杭が入っていて、建物計画の工夫次第では日の入りも確保し、奥まった静かな環境に暮らすことができます。
高圧線下の土地について
私は専門家ではないので高圧線からの健康被害がどれだけあるのかは、正直言って全くわかりません。
ただ、高圧線下の土地の地価はその周辺の土地に比べて安価になっていることは確かのようです。
ただ、現時点では、健康被害の根拠が示されているわけでもなさそうなので、絶対に買ってはいけない土地ではないとしても、はっきりとしない色々な憶測がある以上、あえて高圧線下の土地を選ぶ必要はないでしょう。
健康被害だけでなく、災害時に高圧線が切れて家に直撃でもしたらなどと考えると極力、万一の危険要因は避けるべきではないでしょうか。

災害リスクは少ないか?
ここでいう災害とは地震・台風・洪水・津波・土砂崩れ・液状化などのことです。
これは皆さん自身で必ず調べてください。
国交省や自治体からもきちんとハザードマップが示されています。
ネットで検索すれば確認できます。
地震や津波、崖崩れや洪水などはいくら家を頑丈に作ったとしても生命の危険に至る大きな被害が出ます。
その被害を避けるために一番重要なことは、まさにそのような災害リスクの少ない土地選びしかないのです。
前回のブログで、建替えの方は土地探しをしなくていいからラッキーです、と言いましたが、申し訳ございません、この項目だけは違います。
土地探し組の方々のメリットは、まさにここだと思います。
これから新たに土地を探すのであれば、絶対的に災害リスクの高そうな土地は避けるべきです。
いいなと思う土地に出会ったら、まずは国交省のハザードマップポータルサイトを検索してみてください。答えが見つかるはずです。

その土地を取り囲む様々な環境は良好か?
次に話すことは、意外と盲点だと思いますが重要ですので聞いてください。
それはその土地のリサーチです。
その土地を買う前に何度か足を運び、近所の人に積極的に声をかけて、その土地が住みやすい場所なのかをリサーチしてほしいのです。
やり方は「今度ここの土地を買おうと思っている〇〇という者です。事前にご挨拶をさせていただこうと思い伺いました。」と言ってお隣やお向かいの家のチャイムを鳴らしてください。
大抵の近所の方は、これからすぐ近くに住もうとしている人を邪険にはしません。
きっと「まぁ、そうなんですか。楽しみにしてます。うちには小学何年生の息子がおりまして…」など、世間話が始まることもあります。
その際、後々土地を購入しないことも考えて、名刺などの連絡先が分かるものは渡さず、「決まりましたら改めて伺います」程度に留めておいてください。
そこで世間話ができ、特に問題のなさそうな土地柄だということが確認できれば大成功ですが、相手も突然の訪問者に戸惑ってしまい、あまり具体的な内容が聞き出せない場合が多いと思います。
しかし、そこに足を運び、その地域が持つ雰囲気を身をもって感じるだけでも、きっと何かしらの気づきとなるはずです。
例えば…
- よく近くで子供たちが遊んでいる姿を見かけるから若い世代が多いのかな。
- 日中は不在の家が多いので共働きの家庭が多いのかな。
- 自治会への参加の誘いを早速受けたってことは寄合いや集会などが活発なのかな。
- 近くの工場の音がけっこう聞こえてくるな。
- 路駐が多いな。交通量が多いな。夜は明かりが少なく暗いな。
- 近くの用水路から少し匂いがしていたな。
- 煙突のある家があるな。煙や匂いの心配はないかな。
など
あと、工事中、やたらと押付け的な要求を言ってくる近隣の方がいます。
いわゆるクレーマーです。
現場の人に対して言ってくるのだけであれば問題ないのですが、そういう人はおそらく入居後も皆さんに対し、何かしら良くない影響を与えてくることが考えられます。
そういう人が近くにいる場合は、近所の方々も自身が新築した際などにクレームを受けている可能性が高く、リサーチの際「そういえばあそこの角の家の方は、近所からもちょっと警戒されている方なので、工事中は特に気をつけて」なんていう情報をもらえることもあります。
それに気付けたのであれば、とても良い収穫です。
上記のようなことに気づき、それを許容できるのか許容できないのかを判断をすることが可能なのは土地購入前だけです。
リサーチをすること自体は、土地を購入しないことになったとしても問題にはなりません。
購入して建築が始まる前のご挨拶で、むしろ受け入れられやすくなります。
何度も言いますが、必ず土地の契約前に近所のリサーチをしましょう。

見えない地中を想像したことがありますか?
工事着手後に一番トラブルが多いのは地中に関することです。
いざ、基礎工事に入ろうとすると地中に埋められていたコンクリートの塊がゴロゴロ出てきたり、水が溢れてきたり、ひどいときは過去の家の杭がそのままだったりして、その対応に追われることがあります。
地盤調査をしても目的は地盤補強内容を決めるための土の採取であり、直径10センチほどのピンポイントで数カ所のみを行います。
コンクリートの塊などにたまたま当たれば気付くかもしれませんがその確率は低く基礎工事着手後、重機で全体を掘り出した時に初めてわかるのです。
それは地中障害物と呼ばれ撤去をしなければなりません。
地中障害物の撤去費用は、建物の契約上も皆さんの負担となってしまいます。
それを避ける唯一の方法は、過去にその土地には何があったのかを調べることです。
その敷地が以前、
- 池
- 工場
- 田んぼ
- 駐車場
- 林
であるならば、きちんと調査してください。
- 「池」は水に関しての心配があります。
- 「工場」はそこで使っていた廃油や建物解体時に残したコンクリート基礎。
- 「田んぼ」や「駐車場」は埋戻し整地をした際に劣悪な土を入れられていないか。
- 「林」だったところは古い樹木や根っこの腐った地層が腐葉土となっている可能性がないかなど
特に、1970年代までの高度成長期に埋め戻しをされた土地には何が埋まっているかわかりません。
当時はリサイクル法も無かった時代、イケイケだったので、土地を作るためにとにかく何かを埋めれば良いという風潮があったらしいです。
→ 私が昔、先輩から聞いた話。本当かどうかわかりませんが、地中を掘ったら壊れたブルドーザーがそのまま埋まっていた、なんて都市伝説のように語っている人がいました。解体工事といっても建物の見えている部分は解体するが、地中の基礎は見えない部分なので、そのまま埋めてしまうとかもよくあったそうです。
おそらく土地の売主の瑕疵担保責任で不動産屋さんが対処をしてくれますが、そうなった時に、工事着工が遅れたりハウスメーカーにも迷惑をかけてしまうことになります。
過去にその土地に何があったのかを調べるには、ネットで古地図(こちず)と検索してみてください。
わからなければ不動産屋さんに調べてもらいましょう。
『今昔マップ on the wed』 (C) 谷謙二研究室

地盤の硬さ
地盤の硬さは皆さんはあまり気にしなくていいと思います。
地盤が弱い場合は基礎を支えるための地盤補強工事を必ず行うからです。
地盤補強工事とは建物を支える基礎部分と地中深くにある硬い地盤の表面を繋ぐ工事です。
それはビルダーが地盤調査を行い内容を決定していきますが、その決定内容はとりあえず信じてもいいと思います。
なぜなら、そこで不適切な判断をして、建設後に建物の沈下が発生した場合、ビルダーがきちんと保証をしなければならない部分だからです。
ビルダー側も当然そのようなデメリットは避けたいので適切な判断に努めます。
もちろん山の近くの岩盤でできた硬い地盤などでは地盤補強工事が必要なく、費用が安く済むというメリットがあります。
ただそれにこだわりすぎると土地探しの制約をしすぎることになってしまいます。
地盤改良のような技術で補填できるのであればそれに任せればいいのです。
周りの家の塀をチェック
土地を買う前にリサーチに行った時、周囲の建物の塀のブロックを見てください。
表面地盤が弱い場所では塀のブロックの目地に亀裂が入っていたり、一部が下がってしまい陥没していたりしています。
近所の方には申し訳ないんですが、それは、表面地盤の硬さを考察する判断基準のひとつになりますので覚えておきましょう。

今と未来の自分たちの生活環境にマッチしているか?
皆さんがマイホームを建てたいと思っているのは今現在ですが、その土地で生活をする期間は何十年もの長い期間です。
最低でも10年後の皆さんやご家族がどのような環境にいるのかを想像しておいてください。
家族形態は確実に変わっていきますので、その変化に対応できるような環境でなければなりません。
また、その土地の将来性も考えてください。
地価の下落が極力ない場所を選びましょう。
過疎化をたどる一方の土地と、発展途上でこれからの人口増加が見込まれている土地とがあれば選ぶべき土地は明白ですよね。
まとめ
色々話してきましたが人と同じで、土地にもフィーリングがあります。
最終的に迷った時はの最終判断基準は初めてその場所に行った時に率直にどのように感じたのかということを思い出すのがいいでしょう。
とにかく後から後悔しないためにも、慎重な土地探しをするようにしましょう。
コメント
家作りの一番最初に行う土地探しについてブログをリメイクしました。
ここで間違った選択をしてしまうと大きなトラブルに巻き込まれる事があります。お伝えしたい事が多すぎて、かなり長文になってしまいましたが是非読んでいただきたいです。