高齢者の新築計画。
家づくりのテーマが「安心して暮らせる終の住処」だ、とおっしゃっていたお客様がいました。
高齢のご夫婦でご子息はすでに別宅で家族と生活しており、迷惑をかけたくないから元気なうちに自分たちの家を建てることにしたそうです。
最近、二世帯住宅を選択する方よりも独立した生活を希望される方が多くなってきているように感じます。
確かに元気な高齢者が多いのは事実です。
少し寂しいような気はしますが、これが時代の流れなのでしょう。
バリアフリー法が2018年に改正されました。
高齢者や障害のある人たちが安心して暮らせることを目的とした法律です。
特に高齢者の人口割合が増加している日本では住宅内での高齢者の事故が多いのが現状です。
住宅計画で高齢者配慮は絶対に欠かせない部分です。
そうです。いずれ皆さんも高齢者となる日が来るのですから。
今回のブログでは高齢者が安心して住める住宅をテーマに二回に分けてアドバイスをしていきます。
高齢者配慮住宅のもう一つの考え方
今のうちからやらないといけないことかどうか。
高齢者に配慮した住宅を突き詰めていくと、いわゆる高齢者施設のようになってしまいます。
でも住宅ですからあまり施設感は出したくないのが本音だと思います。
ですので、あくまで現在の身体的な状態に合わせて計画し、将来の対策が容易にできる工夫をしておくことが最善の方法だと思います。
例えば、現時点では歩行に問題がなければ手すりが両側に設置されている廊下はいりません。
しかし、将来本当に手すりが必要になった時に、今の段階から壁の中に下地を入れておくことにより簡易的な工事で手すりの設置ができます。
つまり、
- 最初から作り付けておかないといけないもの(ハード面での対応)
- 後から付け足すことができるもの(ソフト面での対応)
の両方からアプローチして考えていくことが大切です。
そのポイントをこれから押さえていきましょう。
ソフト面での対応が可能なこともある。
先ほど述べたように、何でもかんでも新築計画に取り入れればいいというものではありません。
まずはソフト面から対応が可能なものについて例を挙げていきたい。
例えば
- 足が悪くなり框分の昇降が困難になった時は、後から玄関台を置く。
- 視力が悪くなり階段の色味が見えにくくなった時は階段の先端に色付きのテープを貼る。
- マットのずれ込みにより滑って転倒することを防止するにはマット裏に滑り止めを敷く。
- 転倒しそうな時に家具などに手をかけて怪我をすることを防止するために家具を固定する。
他にも
- 脱げやすいスリッパは使わない。
- 滑りやすいWAXは使用しない。
- 高所のものを取るための作業台を用意しておく。
- 小さな段差につまずくようであれば段差解消用のすりつけ板を設置する。
など、道具や材料を工夫することで状況を改善することも視野に入れておきましょう。
いずれの対策も、そうなった時に対応するという考え方からの発想です。
最初から完璧に高齢者住宅のセオリーに基づいて施設のような計画を立てることはナンセンスだと考えます。
ここから先はハード面の対応をしておかないと後にソフト面での対応が困難になることを避けるために住宅計画時にやっておくことをアドバイスしていきます。
住宅計画時に配慮しておかなければならないこと(その1)
段差解消
まずは段差について。
家の中の大きな段差といえば階段です。
階段を無くすには平家建てにするのが理想です。
平家建てにするにはそれなりの敷地面積が必要ですし、二階建てと比べるとどうしても割高になります。
そこで、2階3階建ての計画ならホームエレベーターを考えてみるのもありです。
ただしホームエレベーターは費用が高く、300万円〜500万円ほど初期費用にかかるだけでなく定期点検やメンテナンスの費用が年間数万円と言います。
もし皆さんが経済的に余裕があるのでしたら平家かホームエレベーターを採用してみてください。
そう考えていくと、費用を抑えるためにはやはり階段を採用することになります。
階段を採用する場合は以下の点を注意して計画をしてください。
- デザインを重視してのガラス階段は滑りやすい。
- 段板の形状が複雑だと足を踏み外しやすい。段の奥行きは均等に。
- 踊り場を採用し、周り階段は採用しない。
- 片側手すりの設置は降りる時の利き手側。
つまずき解消
次に、つまずきについてです。
電気配線が部屋の中を横たわるとそこに足をかけてしまい転倒することがあります。
部屋の中の家具のレイアウトだけでなく家電を置く位置もきちんと平面図に落とし込み、コンセントの位置を慎重に決めましょう。
また、モノの整理がつきづらく床に放置されていればそれも危険要因です。
それを解消するために出し入れしやすい収納、つまり片付けやすい収納計画にしましょう。
細かな注意点ですが床の種類を部屋ごとに変えると色の分かれ目で床見切材を設置することになります。
ほんの数ミリではありますが、そこに段差ができます。
全ての部屋ごとに床の種類を変えるのは控えたほうが良さそうです。
引き込み戸や引き戸の場合は吊り戸仕様にしましょう。吊り戸であれば扉の下にレールの金物が来ることはありません。
レールの数ミリの厚みにより、つまずくことを回避できます。
室内ではありませんが、外構で建物周り全体を砂利で仕上げることもありますが、歩く時に砂利に足をとられてつまずくことがあるそうです。
砂利部分をそのまま歩くのではなく、デザイン性のいいコンクリートなどを使い通路を確保する工夫をしましょう。
すべり解消
床に使う材料には様々なものがあります。
タイル、クッションフロア、フロアタイル、絨毯など。
そして、床材の代表はフローリングです。
しかし、実はフローリングは滑りやすい材料の代表でもあります。
特にスリッパとの併用は良くありません。
WAXをかけるとさらにすべりやすくなる場合があります。
また転んだ時の衝撃が大きく、怪我をしたり床を傷つけやすいです。
それをふまえて、おすすめしたいのはクッションフロアやフロアタイルです。
どちらも比較的柔らかく掃除もしやすくいろんな柄が選べます。
その中にはすべりにくい柄のものもあります。
柄物に抵抗があるのであればフローリング柄のクッションフロアがあったりします。
ぜひ検討してみてください。
まとめ
長くなってしまうので今回はここで一旦区切ろうと思います。
高齢者の方々が安心して暮らしていける住宅を考えていると、両親のことを考えている自分がいます。
幸いなことに今はまだ元気で別の場所で暮らしています。
しかし、やがて不自由な状態になった時に慌てなくていいようにしたい。
そのためにも住宅の面でのサポートは必要不可欠だと感じています。
次回はハード面の対応についてのアドバイスの続きです…。
→他人事ではない?高齢者が安心して暮らせる住宅を考える。(その2)
コメント