はじめに
普段、生活しているとたくさんの音に囲まれていることに気づきます。
今でも耳を澄ますとこんな音が聞こえてきます。
近所で犬が吠える音。
私がキーボードをカチカチ叩く音。
妻が夕食の準備をしている包丁の音。
夕刊を配る新聞配達のバイクの音。
これらの音は日常的であるがゆえに大して耳を傾けないし気にも留めないのではないでしょうか?
しかし、これが自分にとって嫌な音だと認識した途端、どうしても許せない騒音になってしまう可能性があります。
アパートやマンションであれば隣の家と天井や壁を隔てて接しているので、隣人の生活音が伝わってくることもあるでしょう。
しかし、新築戸建住宅を計画している方の中には、そのような騒音や迷惑音から解放されることが目的の一つである方も多いのではないでしょうか。
もしくは、自分たちの生活音がもしかしたら近所への迷惑となっているかも知れないという不安からの解消かも知れません。
今回の記事では『家の中の音対策』というテーマで新築計画時に注意しておくことや自然発生的に起こりうる音への対処法をまとめてみました。
ぜひ最後まで読んでみてください。
音の出る設備
住宅には生活を豊かにするため、いくつかの設備機器が搭載されます。
その中には構造上、常に音を発する機械があります。
しかし音が出る設備だからと言って排除することはなかなか出来ないはず。
例えば、
音源①
・洗濯機・エアコン室外機・浄化槽ポンプ
これらは稼働するときに機械が振動し、その振動音が発生するものです。
対策としては以下の2点に絞られると思います。
対策
1.設置位置を工夫する。2.設置方法を工夫する。
まず、設置位置は間取りや外構計画の中でそれらの音が発生しても生活者や近隣に迷惑のかからない場所を選ぶということです。
例えば洗濯機ですと洗面所や脱衣室に設置することが多いと思うので、洗面脱衣室を居住時間が長いリビングから少し離した場所にするのが得策です。
それから二階に設置する場合もその真下に居室を計画しない方が良いでしょう。
また、エアコン室外機や浄化槽のポンプは屋外に設置するので隣家の間取りを考え、窓や勝手口の目の前に来ることを避けるなどの配慮が必要です。
次に設置方法の工夫については硬い床に直置きをするのではなく、機器の足元に防振ゴムなどをかまし振動を干渉してあげる方法があります。
そして他にも
音源②
・食洗機・キッチンの洗い物
・トイレの流水音
・シャワーの音
・掃除機の音
などが音を発生させる機械や設備です。
これらは人が使用するときにどうしても音が出ます。
使用する時間帯やタイミングを調整することで同居者や隣人への迷惑を回避できたりします。
あまり神経質になる必要はないと思いますが、気になる場合はプランニングの段階から間取りの調整などの対策を協議すると良いでしょう。
響く音
住んでみて初めてわかるのが室内の反響音です。
音源③
これは空間を広く取りすぎることが原因で発生します。
例えば吹き抜けです。
リビングに吹き抜けを作ることは、広がりを感じれるし住む人にゆとりを与えてくれるので誰もが憧れますよね。
しかし、リビングで話す声が反響してしまったり吹き抜けを通して接する居室に生活音や声が筒抜けになってしまったりすることがあります。
この場合、吹き抜けが本当に必要なものなのかじっくりと検討する必要がありますし、もし吹き抜けを作るのであれば居室に接する間仕切り壁は遮音間仕切り壁とするのが理想的です。
吹き抜けがなくても、家具のない居室では話し声が反響して響くことがあります。
その原因は、音の周波数を分散してくれたり吸収してくれる家具がまだ設置されていないから起こることです。
家具を入れた途端、反響がなくなることがほとんどですので安心してください。
補足ですが、畳コーナーを設けると畳が吸音効果を発揮し、室内の反響を抑えてくれるという話も聞いたことがあります。
試してみてはいかがでしょうか?
次に取り上げる室内で響く音はこれです。
音源④
玄関扉を閉めた途端、その他の室内建具が「ガタガタ」と振動する現象です。
これは近年の住宅が気密性能が向上したため、外から入った空気の圧力をダイレクトに他の部屋へ伝えてしまうから起こる現象です。
特に玄関の隣に和室があり和室の入り口に和室建具がある場合はガタガタ音がすごいです。
それは洋室建具と違い、和室の建具はアソビが多く、板としても薄く軽いので空気圧の振動を発生しやすいからです。
試しに和室のサッシ窓を全開にして同じ動作をしてみてください。
空気が窓から外に逃げるので和室建具の振動はそれほど起こらないはずです。
理由が分かっていても気になるのであればプランニングでの検討が必要です。
ご注意ください。
音源⑤
・二階廊下を歩く音・ドアの開け閉め(引き戸のガラガラ・開戸のバタン)
二階から伝わってくる音に関しては床を防音効果の高い遮音床とすることが一番の対策です。
その上で、プランニングの際、二階廊下を一階のリビング上に配置しないようにするなど、配慮をすることも大切でしょう。
廊下ではなく居室の音を下の階に伝えないということであれば、居室にカーペットを敷くことで一定の効果はあるはずです。
是非試してみてください。
また、ドアの開閉音については、ある程度仕方がないのかなと私は思っています。
そこで人が生活しているわけですし、部屋を移動するにはドアを開け閉めしないといけないわけですから。
うるさいから開け締めをするなとは言えませんよね。
ただ、引き戸にするか、開き戸にするかの選択で少し対策は取れるような気がします。
個人的には、夜中に引き戸のガラガラ音が鳴ると多少気になったりします。
同じ考えの方は引き戸を極力使わないようにするといいかもしれません。
また、現在は引き戸でも開き戸でもドアクローザー付きの建具が存在します。
それを採用することにより、ゆっくり閉まってくれるので「バタン」という音は無くなるはずです。
どうしても気になる方はドアクローザー付きの建具を検討してみてはいかがでしょうか。
家鳴り
入居が終わりしばらくすると「パキン!」「ピシッ!」という弾けるような音が家の中のどこからか聞こえてくることがあります。
音源⑥
中にはラップ音と言われる心霊現象と思い込み、お祓いに行こうとする方がいます。
しかし、そんな心配をする必要は全くありません。
何故なら、これは「家鳴り」と呼ばれる自然現象だからです。
実は構造体で使われている木材や鉄骨材は季節に応じてほんのわずかではありますが伸縮を繰り返します。
つまり、柱や梁の接合部分がその歪みに耐えられなくなったときにズレを起こし「パキン」という音を発生させます。
特に、朝が寒くて昼間が暑くなりまた夜になると冷え込むなど、朝晩の寒暖差が激しいときは鳴りやすいです。
また、外壁の色が太陽熱を吸収しやすい黒だったりすると、さらに音の発生頻度は高くなります。
でも安心してください。
これは新しい材料がこの家になじんでいこうとしている証拠です。
例えて言うなら、真新しい靴を履いて自分の足に馴染ませようとランニングをしている状態です。
皆さんも真新しい靴より練習でなじんだ靴のほうがしっくりきて走りやすいですよね。
家の構造体がそのような形で安定した状態になるように家を整えていると考えてもらえば結構です。
数年も経てば伸び縮みの頻度も少なくなり音はしなくなることが多いです。
それと構造体とは別の場所から「パチパチ」「ミシミシ」と言う音が聞こえることがあります。
これはほとんどがポリカーボネードやプラスチック材料の気温変化による膨張・収縮が原因です。
夏の暑いときにカーポートの屋根に近づいて耳を澄ましてみてください。
エアコンのそばで耳を澄ましてみてください。
きっとそのような音が聞こえてくるはずです。
外からの騒音
家の中であれば、プランニングや生活スタイルの工夫で音に対するストレスをある程度は軽減することができます。
しかし、屋外からの音はどうしても発生しますし、その発生源を止めることはなかなかできません。
例えば以下のようなものです。
音源⑦
・強い雨・ひょうの音・道路の交通音
・近くの学校や幼稚園の音
・近くの工場からの作業音
これらの場合は、土地を選ぶ段階から考えなければならない部分ですし、土地が決まっているのであれば建物の外壁や屋根の防音性能を上げるしか方法がありません。
もしそのような立地に家を建てる場合は、採用しようとしている外壁や屋根の防音性能を必ず確認するようにしてください。
まず外壁の防音性能を上げるためには外壁材そのものの性能はもちろんですが、実は窓にポイントがあります。
いくら外壁の性能を上げたところで、そこに大開口の窓があっては防音性能は確実に落ちてしまいますよね。
以下に窓に関する防音対策のポイントを挙げておきます。
対策
・騒音発生側面の窓を大きくしない・窓ガラスを二重サッシにする
・ガラスを複層ガラスにする
・防音カーテンを採用する
そして強い雨やひょうの音対策については屋根の防音性能を上げることです。
その対策例を以下に示します。
対策
・フラット屋根を採用しないか採用した場合は屋根裏に防音対策をしっかり施す・ガルバニウム鋼板は音が響くので極力採用しない
・瓦を採用する
フラット屋根の場合は二階天井と屋根の位置がとても近くにあり、雨の音がダイレクトに室内に入ってきてしまいます。
またガルバニウム鋼板は雨が弾く音がひびきやすいです。
フラットでガルバは極力採用しないことと、どうしても採用する場合は防音措置を確実に行う仕様にしてください。
以前、実際にあった例を挙げておきます。
トラブル事例
これは、大屋根(二階の屋根)の庇の出が外壁面から15センチしかない形状のお宅でした。
庇の先端にある受け樋の外側の表面に当たった雨がその表面を伝い、微妙な勾配を伝いながら水を集め水滴になって落ちる先がシャッターボックスでした。
シャッターボックスは内部がほぼ空洞で太鼓のような役割を果たし、樋から落ちてきたたった一滴の水滴でも「パーン・パーン」と音を響かせていました。
トラブル対策
まとめ
いかがでしたでしょうか?
入居するといろいろなパターンの音がいろいろなことが原因で発生し、皆さんを困らせてしまうかもしれません。
残念なことに、新築戸建住宅の計画時に音に関しての問題があまり考察されていない場合がよくあります。
現場監督をやっていて、施主様からのご意見を聞いていると、入居後これは失敗したという内容の多くが音に関することなのです。
実際に生活をしてみないと分からない部分ではあるので仕方がないとは言え、知っていれば対策ができたかもと後悔をしないようにしていただきたい。
ぜひ、計画段階から家の中の音に対して想像力を働かせ対策をとり、入居後は静かな環境で新生活が送れるよう工夫をして欲しいものです。
では、今回はここまでといたします。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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