はじめに
家づくりの打ち合わせが終わり、最後の仕上げは工事の着工です。
工事着工とは一般的に地盤改良工事や基礎工事のスタートする日のことを言います。
実は、着工の時期によって、家づくりを安心して見守れるか、あるいはハラハラしながら見守ることになるのかが大きく変わるポイントであることを知っていますか?
しかしながら、着工の時期というのは流動的で打ち合わせの進み具合などによって前後します。
なかなか思うように選べるものではありません。
そこで、目指すべき着工に合わせ、前工程である契約や打ち合わせの進捗を計画的に進めていけば、意識的に着工のベストタイミングに合わせることができるはずです。
では、どの時期に着工をするのがベストタイミングなのか?
今回はそれを解説していきたいと思います。
是非最後まで読んでみてください。
着工のベストタイミングはいつ?
では最初に、私が結論づけた着工のベストタイミングはいつなのかお伝えしようと思います。
着工のベストタイミング。
それは…。
『9月』に工事着工です!!
注目した考察項目は「材料」「日本の天候」「税金」の三つです。
では一つずつ理由をご説明していきたいと思います。
9月が着工のベストタイミング その理由①「材料」
建物の構造で重要な材料にコンクリートがあります。
コンクリートは基礎などに使用されます。
通常は屋外での施工となり、その品質はどうしても天候や気温・湿度に左右されてしまいます。
ただ、それらの要因に左右されないように、コンクリートの品質を保持するための対策はあります。
例えば、雨が降っている時は作業を行わないとか、雨でも作業を行うときには施工後に雨よけのカバーをかけるなどの対策を取ります。
気温が高すぎると乾燥が急激に進み、コンクリート表面にひび割れが発生する原因になります。
そのような場合はある程度固まった後に表面に水をかけ散水養生をしたりします。
寒い季節には温度補正値をプラスした強度のコンクリートで施工します。
適切な時期ではない場合は、このように様々な対策をとって品質が保たれるように施工者が工夫をしているのです。
つまり、コンクリートの施工において、安定的な品質を確保するのに最適な季節を考えると、気温が高すぎたり低すぎたりしない春か秋であると言えます。
次に構造躯体に使用される木材です。
木材はその材料自体に水分が含まれています。
湿度が高い夏場では木材の内部の水分量は冬場より多いと考えられます。
そうするとどういうことが起きるか。
それは材料の膨張です。
もちろん目に見えるような膨れではありませんので誰も気づくことはありません。
木造住宅の構造体に使われる柱や梁で考えてみましょう。
例えば夏場の建て方工事で木材をピッタリ掛け合わせて固定させます。
しかし、乾燥時期の冬場になって木材の乾燥が進むとピッタリ合わさっていた柱と梁の間にうっすらと隙間ができる可能性があると言えます。
つまり、木材を使用する施工は材料が乾燥している冬場に施工するのがベストなのです。
また、梅雨のシーズンには建て方工事中に雨にさらされる確率が非常に高くなります。
雨にさらされてしまうと木材からアクが滲み出てシミとなって残ることがあります。
台風のシーズンは風で材料があおられ作業に危険が生じます。
現場で事故があったら困りますよね。
トータルで考えても台風が終わった秋口から冬場にかけての施工が木材のベストタイミングです。
9月が着工のベストタイミング その理由②「日本の天候」
日本には春夏秋冬があり、梅雨や台風のシーズンがあり、冬には雪が降ります。
私たち日本人にとって季節の移り変わりはこの故郷で生きているという実感となります。
私は趣味でキャンプをしています。
目的は木々や清流などの自然を肌で感じるためです。
自然に身を委ねていると心が落ち着いて、とても元気になれます。
なので日本の自然や四季の移ろいはかけがえのない素晴らしいものであり、尊いものだと実感しています。
しかし、建物の工事となると季節の変化は残念ながら厄介者です。
雨が降れば外作業は進めることができません。
外構工事であれば、雨で土が濡れてしまうと水を含んだ土は泥となり、扱うことが困難になります。
雪が積もってしまえばなおさらです。
屋根屋さんは雨や雪の作業は危険が伴う為、中止にすることが多いです。
日本の天候は本当に作業者泣かせです。
品質を一定に保とうとするのであれば一定の温度や湿度の整った工場のような環境で施工をすればいいのですが、もちろんそうはいきませんよね。
それは仕方がないことです。
もちろん日本の風土に合わせて長年の経験から得た技術的な方法で品質は確保されているはずです。
ハラハラしながらも施工者を見守ってあげてください。
ただ、ここでお伝えしたいのは、施主として安心して工事を見守る為に、環境に左右されにくい時期を選んで施工するのがいいのではないかということなのです。
そのような意味を踏まえた上で9月着工を目指してくださいね。
9月が着工のベストタイミング その理由③「税金」
建物が完成した後に税務署からの連絡がきます。
「固定資産税の調査にお伺いしたいのですが…。」
税務署さんはどこで誰が新築工事をしているのかを常に調査しています。
引き渡しがされたことが分かるとすかさず連絡が入ります。
住宅の固定資産税は1月1日に入居されているのかどうかが基準となります。
つまり12月に引き渡しが行われた場合、税務署から12月中の固定資産税調査を依頼されます。
12月に調査を行えば、その年から固定資産税が課税スタートとなってしまいます。
しかし、一月に引き渡しをすれば次の年からの固定資産税の支払いになるのです。
たった数日の違いで一年分の固定資産税を徴収されてはたまらないですよね。
そう考えると引き渡しを受けるのは年が明けてからの方がいいという訳です。
しかし税金は複雑です。
場合によっては年末に引き渡した方がお得になるケースもあります。
広い土地を所有している方の場合です。
土地の固定資産税は建物の固定資産税と考え方が異なります。
特に広い土地の場合は住宅の固定資産税より土地の固定資産税の方が負担が大きい場合があります。
その場合は土地の固定資産税がお得になる時期に引き渡しを受けた方が良いのです。
また、補助金や減税・優遇制度がある自治体の場合は実施される時期が様々なことから引き渡しや入居時期に注意が必要です。
必ずハウスメーカーの担当者や自治体に問い合わせをしてチェックをし、少しでも損をしないように綿密に計画をしておきましょう。
9月が着工のベストタイミング 結論
コンクリートを春か秋に施工し、木材は乾燥している冬に施工と考えるとベストな工程は以下のようになります。
<ベストな工程>
9月初旬 地鎮祭9月初旬 地盤改良工事
9月中旬 基礎工事+コンクリート打設
10月初旬 建て方工事
11月初旬 木工事(内装大工)
12月初旬 仕上げ工事(クロス+設備工事)
12月中旬 クリーニング+補修+各種検査
12月下旬 検査済証発行(※外構工事があればこの辺りでスタート)
1月上旬 引き渡し
いかがでしょうか?
内装工事では、フローリング材やクロスも乾燥収縮しますので秋から冬にかけての施工がベストです。
外構工事については建物の引き渡しと合わせなくても良いのであれば3月着工がベストですが、建物引き渡しと合わせる必要があるのであれば進めていくしかないですね。
ただし、植栽を植えるのは夏場や冬場よりも春先の方が根付きがいいです。
可能であれば、植栽だけは後で工事してもらうとベストでしょう。
まとめ
全体的な良し悪しを考慮し、いいとこ取りをするのであれば9月に着工し1月に引き渡しを受けるのがベストタイミングだと考えます。
ここで補足的にお伝えしたいことがあります。
引き渡し時期については固定資産税・補助金・住宅ローンの他にも様々な検討要因があります。
例えば、引越しです。
引越代が値上がるのは繁忙期の3〜4月です。
値上がる前に引越しをすれば引越代は安く抑えられます。
少し寒い時期の引越しになりますが、おそらく夏場の引越しよりはまだ体力的に楽なのではないでしょうか。
ただし、それぞれの家庭の事情もある為、それに限ったことではないことはご理解ください。
他にも、お子様の学校の転入時期に合わせるのであれば3月引き渡しがベストだと思いますし、妊娠中の場合は出産時期を第一優先に考えるべきです。
いずれにせよ、建物のことやお金のこと、家庭の事情のことを考えて工事の着工時期を計画的に考える必要性があることはご理解いただけましたでしょうか?
ここまで9月着工押しで書いてきて、それを覆すようで申し訳ないのですが、絶対に9月着工でないといけないと言っているわけではありませんから、そこは誤解しないようにしてくださいね。
ハウスメーカーの立場からすれば、9月着工にしてくださいと全ての人に言われてしまっては困ります。
必ずしも私がお話ししてきた工事のベストタイミングでなくても大丈夫です。
現場の管理は季節に応じ適切に行われているはずです。
安心できるというメリットが多いのは9月着工だと言っているだけです。
なので私が提唱する9月着工にしたいのであれば、今のうちからどのように動き出さないといけないかを考えてください。
いつまでに契約し、打ち合わせをどのくらいの期間で行わなければならないかが分かるはずです。
それらを計画的に進め、9月着工を目指してみてはいかがでしょうか。
それでは、今回はここまでといたします。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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