住宅計画時に配慮しておかなければならないこと(その2)
今回は前回に引き続き高齢者が安心して暮らせる住宅について考えていきます。
前回のブログはこちら→
手すり
手すりは最初から取り付ける必要はありませんと書きましたが、将来設置できるように壁の中に下地合板を入れておいてもらいましょう。
下地の高さは使う人の背の高さによっても変わります。
その時にある程度調整できるように床から60センチ〜80センチの間に入れておけば良いでしょう。
また、手すりについては多くの注意点がありますが、話が広がり過ぎてしまうので今回は触れません。簡単な例を挙げると以下のようなことになります。
- 手すりの先端部は袖口がひっからないような形状にする。
- 階段の終わりで止めず最後の一歩まで掴まれるように延長分を設ける。
など。
困難な作業を補助してくれる設備
玄関で靴を脱ぐ時に腰掛けがあると便利です。
普段は折りたたんでおき必要であればそれをおろして使うことができるタイプのものもあります。
電気錠は鍵穴に鍵を差し込まなくてもボタン一つで解錠ができます。
リモコンキーやカードキーなどを使えば便利です。
さらにオートロックの機能もあるので閉め忘れの危険を回避できます。
電動シャッターもボタン一つで操作ができるのでおすすめです。
インターホンは子機が増設できるものを選んでおくといいでしょう。
子機があると寝室にいるまま来客の応対ができます。
親機との通話もできるため移動が困難な高齢者にはとても便利です。
間取り
間取りについては高齢者の動線に合わせて決めましょう。
特に毎日使うトイレの配置は重要です。寝室のすぐ近くへの配置が適切です。
また浴室や洗面などの水回りもなるべく短い動線で移動できるようにしてください。
畳コーナーを小上がりでリビングの一部に作るとメリットがあります。
小上がりにすれば畳に座る動作が楽になるし、下の空間に引出し収納を作ることもできます。
畳があればそこでちょっと横になるのもいいでしょう。
神棚を設置する場合、毎日水を変えたりする時に危険が潜んでいます。
手を伸ばせば届くくらいの高さに設定するのがベストです。
浴室
浴室は高齢者の住宅内の事故が一番多い部屋です。
その内容は溺死とヒートショックです。
計画の注意点とポイントをまとめます。
- 床やバスタブを滑りにくい構造にすること。
- バスタブからの出入りを容易にするための入浴台を設ける。
- バスタブから立ち上がる時のために手すりを設ける。
- ヒートショックを抑えるために浴室暖房を取り入れる。
- 非常ボタンを設置する。
- 出入り口の間口は広めにとる。
照明計画
近年の流行として照度を落とした照明計画があります。
しかし、視力の低下した高齢者からすると明るさは不足しているように感じます。
また落ち着きを求めるなら電球色(オレンジ)、作業に適しているのは昼光色(ホワイト)と言われていますが高齢者の安全性だけを考えるのであれば昼光色を選択することになります。
ただし、昼白色を多用するとオフィスや施設のような色合いになってしまいます。
そこで少し値が張りますが調光・調色タイプの照明器具を選択すれば、どちらの色にも設定できるので便利です。
スイッチの位置は先ほど述べたコンセントの位置と同様、慎重に部屋のレイアウトに沿って計画してください。すぐに手が届き移動する距離が少なくて済むような場所が理想的です。
共用部には人感センサーを使用して、その場所に行ったら勝手に照明がつくようにしておくといいです。
ただし、夜中に目が覚めてトイレに行く時に煌々と照明がついていると目が眩んだりベッドに戻った時に寝付けなくなります。
そのような懸念がある場合は明るさセンサー式のフットライトで足元だけを照らすのもひとつです。
あとは玄関で靴脱ぎをしたりちょっとした作業や本を読んだりする場所には補助照明を計画しましょう。
室温管理
家の断熱性能が高ければ室温管理が容易です。
特に冬場はヒートショックの危険性が非常に高いです。
暖房計画を検討してください。
各部屋にガスコンセントを設置しておけばガスファンヒーターで部屋を温められます。
ガスファンヒーターは石油ストーブと違って燃料の補充作業が必要ないですし、すぐに暖かくなります。
タイマー機能や地震時の自動消化機能がついているファンヒーターがあるので安全です。
床暖房も機能的には優れていますが低温火傷の危険もあるので高齢者の方が継続的に使うのであれば温度設定を弱にしておいてください。
浴室暖房もそうですが脱衣室にも暖房があったほうが安全です。
脱衣室の暖房としては電気ヒーターがいいです。
衣類も扱うので引火の可能性が低いものを選んでください。
そのためのコンセントの設置も忘れずにしておいてください。
トイレも衣服の脱ぎ着をします。
センサー付きの足元ヒーターがあるといいでしょう。
ここにもヒーター用のコンセントを設置しておきましょう。
空間計画
玄関は広いスペースを設けましょう。
狭いスペースだと靴を履いたり脱いだりする動作が困難になる場合があります。
もし車椅子に乗るようになった時に土間からの上がりを解消するため後付けのスロープを設置します。
スロープは勾配を抑えるために広いスペースが必要になります。
もうひとつ玄関を出たところにある屋根ひさしの面積を広く取ってください。
ゆっくりとした動作でも雨に濡れない工夫です。
トイレは介助者用スペースを考慮してください。
脱衣室では服を脱ぐ時に椅子が必要になる場合があります。
ですので椅子を置けるスペースを確保しておく必要があります。
ベットからの立ち上がりのためにはベット横にスペースが必要です。
体を横にずらして立ち上がるほうが容易だからです。
火事対策
火事対策は極力生活の中に火を持ち込まない事だと考えます。
ガスコンロよりもIH
灯油ストーブよりも電気ストーブ
土地探し
お家のイメージがついたら土地探しが必要になります。
高齢者に優しく安心して暮らせる街を選びましょう。
ポイントをあげると以下のようになります。
- 高低差のない土地。
- 介護者がアプローチしやすい道路に接道されている土地。
- 大通りに面していない土地。
- 車を止めやすい土地。
- 車がなくても生活ができる土地。
- 駅が近い土地。
- 治安がいい土地。
まとめ
二回にわたり高齢者の住宅計画について掲載いたしました。
皆さんは、もしかしたらまだ若いのでそこまでのことは考えなくていいと思っていませんか。
人生100年時代と言われているのをご存知だと思いますが、それと合わせて住宅性能が向上し家の寿命も伸びてきています。
もちろん定期的なメンテナンスをする必要はありますが、皆さんが高齢者になっても今から建てる家に住む可能性は充分にあります。
その時にはじめて後悔をしないよう、先を見据えてマイホーム計画に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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