はじめに
これから建築を開始する施主の皆さんや現在工事の真っ最中の施主の皆さんこんにちは。
本日は皆さんがとても気にしている内装の傷についてのお話をしていきます。
新築工事は車や家電などと違って、部材は工場から搬入されてくるのですが、当然ながら現場で組み立てるものがほとんどです。
職人さんはもちろん気をつけながら作業をしてくれますが、残念ながら傷を一個もつけずに建物を完成させることは不可能です。
そういう意味では施主としては傷をつけないでくれと言うよりは、極力・なるべく・どうせなら(!?)大きい傷を数多くつけないように、と祈ることの方が現実的ではないでしょうか。
今回はどうしてもついてしまう内装の傷、特に一番気になるフローリングの傷について、現場ではどのように対応しているのかを紹介していきたいと思います。
ぜひ最後までご覧ください。
工事中の傷 補修って誤魔化し??
内装の床に使われる材料「フローリング」。
フローリングは内装工事の工程の中で比較的早い段階で行われます。
そのため、その後の工事は新しいフローリングの上を歩いて作業が進められることになります。
当然、大工はフローリング施工が終わったらすぐに厚手の養生シートをかけ、上を人が歩いても影響がないように配慮をします。
ちなみに養生をしていない大工さんがいたら現場監督にちゃんと言いましょうね。
そして、内装の工事が全て終わり室内清掃が入るときにようやく床の養生も外されます。
今まで隠されてきた床の顔がお目見えをするので施主としてはテンションが上がるのではないでしょうか?
しかし、そんなときによくよく目を凝らして見ると幾つも傷がついている…。
「これは大変だ!」と顔色を変える方がいるかもしれません。
ただ、実はそんなに慌てることではないのです。
小さな傷であれば、知らなければ分からないくらい綺麗に「補修」ができますから。
ここで・・・
もしかすると「補修」と言う言葉を聞くと聞き慣れない方は嫌悪感を抱くかも知れません。
「補修って言うけどそれってただの誤魔化しじゃん。傷がついた部分は全てやりかえてもらわないと納得できない!!」と声を荒げる施主の方もいるかも知れませんね。
しかし、新築工事では正式な業種として補修工事があり、補修屋さんとして生計を立てている方たちはたくさんいるんです。
そして最終工程に正式に組みこまれており、工事には絶対に必要な作業となっています。
私たちにとっては補修屋さんは信頼のできる技術者であり、必要不可欠な存在なのです。
工事中の傷「フローリング」
ではフローリングの傷について具体的にどのような種類があるのか見ていきましょう。
また、補修難易度や不具合発生率(あくまで私の主観ですが)も合わせて記載していきます。
フローリングの傷に対して一般的な現場監督はこう解釈してるんだくらいの気持ちで見ていただけると幸いです。
凹み傷(大)

大きな材料や道具を落とした跡だとか鋭利なもので引っ掻いたような大きな傷。
よく、このような傷についてお客様からフローリングの貼り替えを提案されます。
しかし、私はそのようなご要望を受けることはあまりありません。
それは将来的なことも含め、長い目で考えた時にお客様にとって必ずしも良い結果にならないことが分かっているからです。
と言うのも、実は大きな傷であっても表面からえぐられたようなものであれば綺麗に補修ができます。
むしろフローリングの貼り替えの方が大きなリスクを背負うことになります。
フローリングの側面にはサネと呼ばれる凸と凹があって、凸部を隣のフローリングの凹部に差し込んで一体となるような形で施行されています。
貼り替えとなるとフローリング同士のジョイント部分にカッターを入れて外さないといけないため必然的にフローリング同士をつなぎ合わせているサネをカットすることになります。
一体につなぐための部位をカットするということは、いくらボンドで固定したとしても、そこのピースだけが構造的に独立していることになるのです。
一旦はきれいになっても、将来そのフローリングだけが反り上がってしまったり床鳴りが生じたりする可能性があります。
なので、ここでは補修できれいにしてもらうのが得策とお伝えしておきます。
補修方法はえぐられた空洞部にパテを流し込み、表面を平らに均した後、色付けをしていく方法が一般的です。
最後に表面の艶感をスプレーで調整して完了となります。
補足的な話ですが、えぐれている部分が深ければ深いほど補修はしやすいと補修屋さんは言います。
空洞を埋めるのに作業がしやすいからだと思います。
人によっては、あえてさらに深く傷をえぐってから補修するという方もいるほどです。
凹み傷(小)

小さな傷は必ず発生します。
フローリングは意外と柔らかいものです。
ちょっと重めの道具などを置いただけで傷がつくことがあります。
ただ、小さな傷であればあるほど補修の難易度は下がります。
大きい傷の時に解説した内容と基本的には同じ方法での補修となります。
ただし、1㎜にも満たないような、あまりに小さい傷であれば補修したら余計目立つ可能性が出てきます。
なかなか現場監督としてはお伝えしがたい部分(お客様には面と向かって言えないこと…)ではありますが、生活をしていれば必ず発生するような傷なので、無理に補修を行わず細身のペンでタッチアップしてもらうか放置するのが良いと考えます。
めくれ

一般的に採用されている複合フローリングの表面部分は単板と呼ばれる薄い化粧板が貼られています。
施工の際、ひっかけたりしてその単板の端っこがめくれてしまって下の層が見えていることがあります。
これも補修対応が可能です。
あまりにひどい場合は単板貼り替えという手段もあります。
これは、現在貼られているフローリングの単板の層だけを剥離し、新しい単板を貼り付けるという工法です。
しかし単板貼り替えは一般の補修屋さんでは施工することができず、材料メーカーから依頼した専門職を手配しなければなりません。
かなりの手間がかかる工事であり、機械で表面を削り取るためホコリもたくさん出ます。
工事側としてはまあまあなリスクが発生するものではあります。
擦れ傷

道具や材料を引きずった際にできたような傷です。
何本もの線上になった傷がフローリングの上を走ります。
結論から言うと補修の難易度はすごく高いです。
補修屋さんに言わせると一番やりたくない傷です。
何本もの細い線に補修の色を落とし、周りのフローリングの部分と色を合わせなければいけません。
繊細な筆さばきと適切な色あわせと根気のいる作業。
補修屋さんにとっては経験値が試される仕事となり、作業をしてくれているのを見ていると、やはり得意な人と不得意な人の差が出やすいようです。
もし、傷のえぐれが薄いものであるならば、表面全体に艶合わせ用のスプレーをかけて目立ちにくくする方法もあります。
どちらの方法を選ぶかは補修屋さんに任せるのがいいかも知れませんね。
うまくいかなかった場合、施主として納得できない場合は単板貼り替えを依頼してみましょう。
以上がフローリングの傷の対応方法です。
ちなみに木材で作られている製品は他にもカウンターや建具など様々な部位があります。
基本的には傷補修方法は今回紹介したフローリングの傷補修同様の対処法となります。
まとめ
この記事を見ていただいた方の中には、もしかしたら「施主の心情に対して配慮してない」と思う方もいるかも知れません。
それはごもっともです。
誰でも自分の家に、そもそも傷なんてつけて欲しくはないですよね。
私たち工事の人間も傷なんてつけたくない、そう思っています。
もちろん傷が無ければその方がいいに決まっています。
ただ断言できます。
傷なくして仕上げれる現場はありません。
何百棟と引き渡しをしてきた私が言うのですから間違いありません。
…と、胸を張ることではありませんが、現実的にそうなんです。
だからこそ、きちんとした管理体制の中で傷チェックを行い、きれいに補修をする体制を整えておくことの方が大事だと思いませんか。
最後に、私の周りにいる補修屋さんは皆さん優秀です。
いつもハンダゴテを持ちながら床にへばりつきながら一生懸命に作業をしてくれています。
私が試しにチャレンジした補修を見てください。👇
ひどいもんです。
そしてついにギブアップして補修屋さんに直してもらった状態がこれです。
どうですか?
きれいなもんですよね?
だから安心してください。
補修には補修のプロフェッショナルがいるってこと。
それをぜひ知ってくださいね。
本日は以上です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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